「体脂肪=悪」とは言い切れません。
体脂肪が増えすぎると、高血糖や血栓などのリスクが高まります。
しかし、体脂肪には「エネルギー源になる」「細胞やホルモンの構成成分になる」「体温を保つ」「外部からの衝撃を和らげる」などの働きがあります。
体脂肪は、多すぎても少なすぎても良くないのです。
また、脂肪細胞は内分泌器官でもあります。
脂肪細胞から分泌される複数のホルモンには、「善玉のホルモン」と「悪玉のホルモン」があり、体脂肪量によってその比率や量が変化しているのです。
以下、主な特徴について説明していきます。
脂肪細胞の分泌する善玉ホルモン
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善玉ホルモンとして代表的なのは2種類です。
レプチンには「食欲を低下させる」「脂肪分解を促す」などの作用があり、アディポネクチンには「代謝を改善する」などの作用があります。
- レプチン:食欲を低下させると共に脂肪分解を促す
- アディポネクチン:脂質代謝や糖代謝を改善する
この作用によって、太ってきたら「食欲の低下と代謝の向上が起こり自然に痩せていく」ことになり、痩せてきたら「食欲の向上と代謝の低下が起こり自然に適正体重に戻る」ということになります。
また、ダイエット中に起こる停滞期の直接的な原因でもあります。
これらのホルモン分泌には、体脂肪が必要です。
脂肪細胞が中性脂肪を蓄積することによって分泌が促されるホルモンですので、体脂肪が少なすぎると分泌量が低下してしまうことになります。
ダイエットの終盤に「強い食欲に悩まされる」「代謝が低下してダイエットが停滞してしまう」などのデメリットが生じるのはこのためです。
過剰な体脂肪による悪玉ホルモン
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過剰な体脂肪は、悪玉ホルモンを分泌させます。
TNF-α、レジスチン、PAI-1など、「肥満は健康に悪い」と言われるのはこれらの悪玉ホルモンが悪さをしてしまうためです。
- TNF-α、レジスチン:高血糖を引き起こす
- PAI-1:血栓ができやすくなる
これらの悪玉ホルモンは、過剰な体脂肪が原因になっています。
体脂肪は、適正であれば善玉ホルモンを多く分泌し、過剰であれば悪玉ホルモンを多く分泌するようなメカニズムになっています。
ここでもう一度、レプチンを思い出してください。
レプチンには「食欲を低下させると共に脂肪分解を促す」作用がありますので、「体脂肪が増えれば食欲も抑えられるのでは?」と考えられるはずです。
しかし、過剰な体脂肪はレプチン受容体の機能を低下させてしまいます。
多少、体脂肪が増えた位のレベルであれば効果的に作用するのですが、明らかな肥満のレベルにまでなってしまうと機能しないことが確認されています。
過剰な体脂肪には、ひとつとしてメリットはないということです。
まとめ
体脂肪には重要な役割があります。
悪者のイメージのある体脂肪ではありますが、多すぎても少なすぎても体には悪影響を与えてしまう組織(細胞)なのです。
「痩せれば痩せるほど良い」……というものではありません。
体脂肪が少なすぎれば「外的刺激から内臓を守れない」「強い食欲」「代謝の低下」などが起こりますし、体脂肪が多すぎれば「高血糖や血栓のリスクが高まる」「善玉ホルモンが働かなくなる」などのデメリットが生じることになります。
体脂肪は、適正値の範囲内であることがポイントになります。