懸垂(チンニング)ができなくても、気にする必要はありません。
適切な練習を重ねていくことで、(極端な過体重でなければ)数週間から数ヶ月間の間にはできるようになります。

ポイントは、戦略的に考えることです。

そこでおすすめしたいのが、「ネガティブチンニング」です。
ここでいうネガティブとは伸張性動作(エキセントリック・アクション)のことを指し、具体的には「下ろす動作」のみを繰り返すことになります。

週1~2回、5回5セット(セット間インターバル60~90秒)ほどのトレーニング変数で実施することで、無理なく懸垂ができるようになります。

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力の強い伸張性動作

伸張性動作(エキセントリック・アクション)には、短縮性動作(コンセントリック・アクション)よりも「大きな力を発揮できる」という特徴があります。

  • 短縮性動作:筋肉が縮みながら力を発揮する
  • 伸張性動作:筋肉が伸びながら(ブレーキとしての)力を発揮する

具体的にいうと、等尺性最大筋力の1.8~2倍ほどの力を出しながら伸張される。そして、ある程度までは耐えながら引っ張られていくのですが、ある一線を超えたところでストンと急激にギブアップするということになるのです。

引用元:石井直方[著]『石井直方の筋肉の科学』P36より

大きな力を発揮できるということは、たとえ懸垂ができない場合であっても「コントロールしながら下ろすことはできる」ということになります。

トレーニング効果を得るためには、「適切な負荷」でることと「適切なトレーニングボリューム」であることがポイントになります。ネガティブチンニングは、トレーニングボリュームを確保するためにも有効な手段です。

伸張性動作では等尺性動作の1.8~2倍の力が発揮されるとうのは、あくまで特定の条件下における実験での話です。実際には、「等尺性動作の50パーセント増し」くらいが妥当な値だと考えられています。

ちなみに、大筋群の複合関節種目である懸垂(チンニング)の場合、伸張性動作では短縮性動作の1.2倍ほどの重量をゆっくり(コントロールしながら)下ろすことができます。

体重70kgで懸垂が1回できるのであれば、14kg分のウエイトをつけた状態でネガティブチンニングができるということになります。

下ろす動作は筋を破壊しやすい

伸張性動作には、「筋を破壊しやすい」という特徴があります。

マラソンや登山(山登り)などで筋肉痛が起こるのは、登りよりも下りが原因になっています。これは、「登り=短縮性動作を繰り返している状態」「下り=伸張性動作を繰り返している状態」であるためです。

伸張性動作によって傷つけられた筋は、なかなか回復しません。

しかし、(伸張性動作によって)強く刺激された筋肉は「回復力が強くなる」という特徴を持つようになります。

実際、最初のトレーニング後には強い筋肉痛が続きますが、それをある程度我慢して2回目、3回目とトレーニングを重ねると、筋の損傷からの回復速度が著しく高まることが示されています。

引用元:石井直方[著]『トレーニングをする前に読む本』P63~64より

ネガティブチンニングでの懸垂の練習をすると、はじめのトレーニング後には強烈な筋肉痛が襲ってきます。なかなか治らない筋肉痛ですので、不安感を感じてしまう方も少なくありません。

それでも、強烈な筋肉痛に襲われるのは、最初だけです。
2回目、3回目とトレーニング経験を重ねていくことで、強い筋肉痛は起こらなくなってきますし、筋肉痛は心地の良いレベルまで低減していくことになります。

筋力と回復力は確実に向上していきますので、心配する必要はありません。

まとめ

懸垂ができないのであれば、下ろす動作のみを繰り返す「ネガティブチンニング」をおすすめします。はじめは強い筋肉痛に悩まされることになるかと思いますが、週1~2回の頻度であれば問題ありません。

ネガティブチンニングでは、ある一線を超えたあたりでストンと力が発揮できなくなります。ゆっくり(コントロールしながら)下ろそうとしても、ブレーキが利かなくなるような感覚です。

そのような感覚があれば「しっかり刺激できている証拠」ですので、ひとつの目安になるのではないかと思われます。