中年太りの原因はエネルギー収支のプラス。理由を知ることが大切。

中年太りは、エネルギー収支のプラスによって起こります。

中年太りが特別なわけではありません。
ヒトの体はエネルギー収支がプラスに傾けば太りますし、マイナスに傾けば痩せることになります。

では、なぜエネルギー収支がプラスに傾くのか?
エネルギー収支がプラスに傾いているということは「摂取エネルギーが増えているか?」「消費エネルギーが減っているのか?」の2点しか考えられません。

以下、中年太りの原因になり得る主な要因をまとめていきます。

運動不足による影響

30歳を過ぎたころから、毎年約1%ずつ筋肉が減っていきます。
エネルギー消費の大きな筋肉が減るということは、代謝が落ち、体脂肪を減らせなくなっていくということです。

「筋肉の減少→代謝の低下→中年太り」というメカニズムです。

さらに、筋肉以外の組織の代謝量は加齢で減少しない(図5-6)。これらのことから、中年以降の基礎代謝の低下は筋肉量が減ることが大きな理由と考えられる。

体重は、ひとつの指標にすぎません。
重要なのは体脂肪と除脂肪体重(主に筋肉量)のバランスであり、体重が軽くても除脂肪体重を失っているのであれば中年太りの可能性があります。

健康に害を与えるのは、体脂肪(特に内臓脂肪)です。
同じ体重増加幅であっても、体脂肪が増えたことによる体重増加と除脂肪体重が増えてことによる体重増加では180度意味合いが違います。

筋肉は老いやすい?

筋肉は、加齢による影響を受けやすい組織です。
特に伸筋(重力に逆らって体を伸ばすための筋肉)は加齢による影響を受けやすく、老化によって姿勢が保てなくなるのは伸筋が衰えてくるためだと考えられています。

筋肉を機能的に分類すると、伸筋と屈筋に分けられます。
前者は重力に逆らって体を伸ばすための筋肉(抗重力筋)であり、後者は体を素早く折りたたんで防御姿勢をとるために働く筋肉です。

  • 伸筋:大腿四頭筋、上腕三頭筋、腹筋など
  • 屈筋:ハムストリングス、上腕二頭筋など

年齢による筋肉の衰えは、伸筋に現れます。
大腿四頭筋が衰えることによる歩行能力の低下、上腕三頭筋が衰えることによる二の腕のたるみなど……、年老いた見た目は、伸筋の衰えによって表面化します。

また、同様の特徴を持つ筋肉は数多くあります。
僧帽筋、広背筋、腹筋群、大腰筋、大殿筋など、加齢によって姿勢が悪くなったりお尻が垂れ下がったりするのは、筋肉の衰えが原因なのです。

食事内容が変わらない?

体脂肪の増加(中年太り)に最も大きな影響力を持つのが食事です。
太るのか?(体脂肪が増えるのか?)痩せるのか?(体脂肪が減るのか?)は、エネルギー収支のバランスによって決まります。

運動(特に筋力トレーニング)の習慣がなければ、30歳頃から年々筋肉量が減少していくことは避けられませんので、それに合わせて食事量も減らさなければ、結果としてエネルギー収支はプラスに傾いてしまうことになります。

また、同じ摂取エネルギーであっても、PFCバランスも重要です。
例えば、タンパク質にはDIT(食事誘発性熱産生)と呼ばれる作用があり、他の栄養素(糖質や脂質)よりもエネルギー消費が高まりやすいという特徴があります。

タンパク質を減らした、糖質と脂質主体の食事は「太りやすい」のです。

アルコールでは太らない?

「アルコールでは太らない」というのは、真っ赤な嘘です。
もちろん、アルコールのみを飲み続けるのであれば太らない(体脂肪は増えない)のですが、そんな食事内容では、太る痩せる以前に体を壊してしまいます。

アルコールは、細胞にとっての毒物です。
毒物は優先的に代謝しなければいけませんので、同時に食べた栄養素(エネルギー)の代謝は後回しにされることになり、体脂肪として合成されやすくなります。

また、アルコールには筋合成を阻害する作用があります。
適量であれば筋合成を阻害するようなことはありませんが、アルコール代謝能力を超えた飲酒は筋合成を阻害して消費エネルギーを下げてしまいます。

アルコールは、太ります。

腸内細菌叢も老化する?

腸内細菌叢(腸内フローラ)は、エネルギー収支に影響力を持ちます。

信じられないかもしれませんが、腸内細菌叢も老化します。
それが「食事内容の変化によるものなのか?」「他に要因があるのか?」については解明されていないものの、腸内細菌叢が変化するのは確実なことです。

そして、腸内細菌叢は中年太りとも密接にかかわりあっています。

脂肪の蓄え方の変化、血中のグルコース値のバランスへの作用、代謝に関係する遺伝子発現への影響、空腹や満腹を感じるホルモンに対する反応への効果など、腸内細菌はさまざまな舞台で指揮を執っている。

腸内細菌叢は、様々なことに敏感に反応します。
「プロバイオティクスやプレバイオティクスを摂取しているから安心」……というわけにはいきませんので、変化に応じた適切な処置を講じていく必要があります。

まとめ

中年太りには原因(理由)があります。
主なものには「加齢による筋肉量の減少」「代謝が低下しているにもかかわらず食事内容が変わっていない」「腸内細菌叢(腸内フローラ)の乱れ」などが考えられます。

まずは、筋肉量を減らさないことが重要です。
筋肉が最大のエネルギー消費者であることは間違いありませんので、「筋肉量を減らさなければ中年太りを防げる」といっても過言ではありません。

筋肉を維持することは難しいことではありません。
週2回ほどの筋力トレーニングでも、維持(もしくは増加)させることができますので、適切な運動習慣を持つことが重要になってきます。

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