アルコールは、筋トレの悪影響になります。
しかし、「アルコールを摂取したらトレーニング効果が無駄になる」ということではなく、個々のアルコール分解能力を超えなければ大きな問題にはなりません。
それでも、アルコールが毒物であることに違いはありません。
適度な飲酒は健康によい(血栓をできにくくして動脈硬化のリスクを減らす)などのデータもありますが、「アルコールには強い細胞毒性がある」ということを忘れてはいけません。
アルコールによるダメージ
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アルコールによる悪影響は、アルコールそのものによるものです。
二日酔い(頭痛など)の原因として、アルコールの代謝物であるアセトアルデヒドが注目されがちですが、代謝物よりも代謝しきれなかったアルコールが問題です。
アルコールが肝臓で分解された後の物質-アセトアルデヒドは、それほど体に悪い影響を及ぼしません。強い毒性をもっているのはアルコールそのもの。
引用元:石井直方[著]『石井直方の新・筋肉まるわかり大事典』P57より
短期的な体への影響を考えた場合、代謝能力を超えた飲酒は、細胞に悪影響を与えることになります。長期的な体への影響では、代謝能力の範囲内であってもタンパク質合成に悪影響を与えることになります。
- 短期的な過度な飲酒:筋分解の促進
- (適量の)長期的な飲酒:筋合成の阻害
断酒をしなければいけないと言うわけではありませんが、泥酔状態になるまでの飲酒や休肝日を設けない飲酒にはリスクを伴うことを知ってください。
急性アルコール筋症
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高いアルコール血中濃度は、筋肉にダメージを与えます。
アルコールの過剰摂取によって起こる「著しい筋力の低下」や「筋肉痛のような症状」は、アルコールによって筋繊維の部分壊死が起こっているためです。
しかも、アルコールによって破壊される筋繊維は、主に速筋繊維となります。
このような症状は、急性アルコール筋症と呼ばれます。
筋繊維が破壊されることに加え、アルコールによってタンパク質合成までもが低下してしまっている状態です。
慢性アルコール筋症
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筋力の低下と総アルコール摂取量には、比例関係が成り立ちます。
泥酔するほどの飲酒は筋繊維を破壊しますし(急性アルコール筋症)、晩酌程度の飲酒であっても長期的に続ければタンパク質合成が阻害されます。
長期的な飲酒によって起こる筋萎縮を慢性アルコール筋症と呼びます。
- 急性アルコール筋症:アルコールが筋肉を分解する
- 慢性アルコール筋症:アルコールによってタンパク質合成が抑制される。
慢性アルコール筋症の原因は、長期的なアルコール摂取によって「成長ホルモンやインスリン様成長因子-1(IGF-1)の分泌が低下する」ことによるものだと考えられています。
アルコールの長期的な摂取によって、タンパク質分解がタンパク質合成を上回ってしまいやすい環境が整ってしまいます。
まとめ
「アルコールを摂取したら筋トレが無駄になる」・・・というほどの大げさな話ではありませんが、程々に楽しむことがポイントになります。
アルコールの代謝能力には(遺伝的な)個人差がありますので、顔が赤くなりやすいなどの特徴があるのであれば、最低限、「泥酔状態までは飲まない」「自宅での晩酌は控える」などの工夫が必要です。
神経質になる必要はありませんが、程々にしておきましょう。