ネガティブ懸垂は、効果的なトレーニング種目です。
ネガティブ動作(伸張性動作)は「筋繊維が間引かれて動員される」という特徴があるため、効果的に筋肉が刺激されます。
また、伸張性動作は大きな力を発揮できます。
「懸垂ができない」という場合であっても、ネガティブ懸垂であればできる可能性があるため、筋トレ初心者や追い込みのためには効果的なテクニックなのです。
以下、ネガティブ懸垂に関する詳細を説明していきます。
ネガティブ懸垂のやり方
ネガティブ懸垂は、下げる動作のみを繰り返します。
一般的な懸垂では筋繊維が伸張している状態からはじめ、筋繊維を収縮させてカラダを持ち上げていきます。
しかし、ネガティブ懸垂では、筋収縮の局面をスルーします。
- 床を蹴り上げてトップポジションをとる
- ゆっくりと体をコントロールしながら下ろしていく
- 再び床を蹴り上げてトップポジションに戻る
簡単なトレーニングに見えますが、楽ではありません。
特に、トレーニング翌日以降に「強い筋肉痛の起こりやすいトレーニング動作」となりますので、筋トレ初心者や再開したばかりの場合には注意してください。

STEP1
トレーニングの準備
ネガティブ懸垂には、準備が必要です。
筋が収縮しているポジション(トップポジション)からスタートすることになりますので、「バーを下げる」もしくは「踏み台を準備する」などの準備が必要になります。
一般的なチンニングスタンドを使用している場合は「ジャンプしてスタートポジションをとれる位置まで下げておく」こと、パワーラックを使用している場合は「ベンチを踏み台の代わりにする」などです。
それ以外の場合は、適宜、対応してください。
STEP2
コンセントリック局面
コンセントリック局面は、スルーします。
床を蹴り上げ(または踏み台を使い)、懸垂のトップポジション(胸がバーに近づけるようなポジション)をとります。
可能であれば、1~2秒キープしてください。
STEP3
エキセントリック局面
フォームを意識しながら、ゆっくり下ろしていきます。
コントロールしながら下ろしていくことがポイントであり、ストンと落ちてしまうようであればネガティブ懸垂に必要な筋力が備わっていないということになります。
ネガティブ動作(伸張性動作)で筋肉がオールアウトすると、体を支えられなくなり「力が抜けるような感覚」になります。「コントロールしながら下ろせなくなる=対象筋がオールアウトしている」ということです。
限界まで繰り返してみてください。
ネガティブ懸垂が効果的である根拠
ネガティブ懸垂は、効果的なトレーニング種目です。
「筋繊維の微細な損傷が起きやすい」「収縮性動作よりも強い力を発揮できる」という特徴がありますので、効果的なトレーニングにつなげやすいのです。
- 筋繊維の微細な損傷が起きやすい
- 収縮性動作よりも強い力を発揮できる
以下、上記2点に関する詳細な説明です。
筋繊維の微細な損傷
ネガティブ動作は、筋繊維へダメージを与えます。
「ダメージを与える」というと聞こえは悪いのですが、強い筋肉痛が起こりやすい反面、修復課程も強く刺激されることが確認されています。
伸張性動作は、トレーニング効果が高いということです。
その結果、ダンベルを下ろすトレーニングを行った腕のほうが、トレーニングの後で筋断面や筋力が増える割合が大きいことがわかりました。
引用元:石井直方[著]『究極のトレーニング』P51より
このことからも、筋トレは「下ろす動作が重要」であるといえます。
懸垂であってもネガティブ動作(伸張性動作)を重視することがポイントであり、伸張性動作を繰り返すネガティブ懸垂にはメリットがあるのです。
伸張性動作の筋力
伸張性動作は、収縮性動作よりも強い力を発揮します。
懸垂が上がらなくなっても(収縮性動作ができなくなっても)、伸張性動作であればトレーニングボリュームを稼ぐことができるのです。
また、高強度のトレーニング時にも有効です。
例えば、肘の屈曲のような単関節動作では、最大負荷(1RM)の1.3~1.4倍くらいまでは誰でもゆっくり下ろすことができます。
引用元:石井直方[著]『石井直方の筋肉の科学』P37より
懸垂は複合関節種目ですので、単関節種目ほど単純ではありません。
上記の「最大負荷(1RM)の1.3~1.4倍くらいまで」というのは現実的な数値ではなく、せいぜい「1.2倍ほどではないか?」と考えられています。
それでも、伸張性動作を重視しない理由はありませんよね?
まとめ
ネガティブ懸垂は、下ろす動作のみを繰り返す懸垂です。
「筋繊維に対してダメージを与えやすい」「収縮性動作よりも強い力を発揮する」という特徴があるため、積極的に取り入れていくべきテクニックです。
トレーニング経験者に、伸張性動作を軽視している人はいません。
「懸垂ができない(数回しかできない)」「背中を追い込みたい」などの場合には、ネガティブ懸垂を取り入れてみてはいかがでしょうか?