プロテイン断食はおすすめしません。
ここでいうプロテイン断食とは、全ての食事をプロテインパウダーに置き換えることを指します。・・・当然、間食としてのプロテインは問題ありません。
プロテインは、タンパク質のサプリメントです。
代替食としてプロテインシェイクのようなものを考えているのであれば、各種栄養素がバランス良く配合されているMRPなどを用いる必要があります。
偏った栄養バランスでは健康を害するリスクが高まりますし、体重は落ちるかもしれませんが、体脂肪のスムーズな減少は起こりません・・・。
極端なカロリー制限
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プロテインだけでは、絶対的なエネルギー不足が生じます。
体脂肪を減らす為には「エネルギー収支のマイナス」が必要です。
カロリー制限をすること自体は間違いではないのですが、大きすぎるカロリー制限は体脂肪を減らさずに筋肉や骨などの除脂肪体重を減らしてしまいます。
筋肉量と基礎代謝量には、正の比例関係が成り立ちますので、続ければ続けるほどに「太りやすく、痩せにくい体質」になってしまうことになります・・・。
また、ダイエットを成功させるためには、痩せた後に「どのようにして体型を維持していくのか?」という問題が考慮されている必要があります。・・・普通の食事に戻したとたんにリバウンドしてしまっては、意味がありませんよね?
ダイエット代替食を夕食に食べていた人であれば、一生、夕食はダイエット代替食でなければこの平衡状態が保てないということです。なぜなら、そのおかげで平衡状態になったのですから。
引用元:石井直方[著]『太らない教室』P78より
これらのことからも、極端なカロリー制限はおすすめしません。
「痩せたい」という思いが強ければ強いほど、極端な方法(この場合プロテイン断食など)に飛びついてしまいがちですが、極端な方法ほど「デメリットが大きい」ということを肝に銘じる必要があります。
栄養不足のリスク
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栄養素の種類と働きは複雑です。
プロテインとは、タンパク質のサプリメント(栄養補助食品)でしかありませんので、三大栄養素の脂質と糖質が不足することになります。・・・また、当然、各種微量栄養素も不足することになります。
体内における栄養素の役割は、主に3つです。
- エネルギー源になる。
- 体の組織をつくる。
- 生理作用を調整する。
極端なダイエットでは、エネルギーばかりが注目される傾向にあります。
しかし、糖質が不足すれば無酸素系の働きが悪くなりますし、脂質が不足すればホルモン分泌などに悪影響を与えます。
また、微量栄養素であるビタミンやミネラルには「代謝、免疫、抗酸化作用の活性化など」の働きがあります。栄養素と似た働きをする食品因子(食物繊維、ポリフェノール、カロテノイドなど)も欠かすことはできません。
プロテインだけでは、不十分であるということです。
体重減少≠体脂肪減少
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体重が減ることと体脂肪が減ることは、イコールではありません。
確かに、糖質を制限すると体重は面白いように減少します。
しかし、糖質を制限したことによる体重減少は、「グリコーゲン(一時的に保存されている糖質)が減少することによる体重減少」でしかありません・・・。
体脂肪が減少しているわけではないのです。
また、糖質を制限しすぎると、運動強度を保てなくなります。
高強度の運動だけは混合食のほうが高いパフォーマンスを発揮しましたが、これはケトン食(≒スーパー糖質制限食)では筋肉に蓄えた糖質(グリコーゲン)の量がやや少なくなるため、無酸素状態の高強度の運動能力がやや低下するからでしょう。
引用元:江部康二[著]『人類最強の「糖質制限」論』P250より
極端な例ではありますが、除脂肪体重を減らさないためには無視できることではありません。・・・事実、自宅筋トレ(自重トレーニング)の範疇であっても、糖質を制限すると運動強度を保つことができなくなります。
体重は減らせますが、待ち受けるのは「リバウンドしやすい体質」です。
プロテイン断食には肯定的な意見も?
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基本的に、プロテイン断食はおすすめしません。
しかし、「週末プチ断食」という書籍に掲載されている比嘉一雄トレーナーのインタビュー記事では「ダイエット導入期には効果的な方法」だと紹介されています。
最初に一回がつっと食事量を減らして、空腹感を楽しめるような、あるいはそれに慣れるようなプログラムを組みます。
引用元:えい出版社『週末プチ断食』P27より
いずれにしても、本質的な除脂肪のためではありません。
ここで紹介されているプロテイン断食は、ダイエット導入部における「大幅な体重減少」「空腹感への慣れ」を目的として行われます。
具体的な方法としては、1~3日間「朝夕を牛乳か豆乳でシェイクしたプロテインパウダーに置き換える」「昼は微量栄養素のサプリメントのみ」という過酷な食事管理方法となります・・・。
- 朝食:プロテインのみ
- 昼食:カルシウム、マルチビタミン、水
- 夕食:プロテインのみ
やはり、個人的にはおすすめできないと考えています。
もちろん、断食(ファスティング)を否定しているつもりはありません。・・・僕自身、断食に対しては「どちらかと言えば肯定的な考え」を持っています。
しかし、目的をダイエットに限定するのであれば、断食には「メリットを大幅に上回るデメリットがある」と考えています・・・。
まとめ
ダイエットのための食事管理には、数多くの手段があります。
しかし、食事をプロテインだけに置き換える(プロテイン断食)などの方法は、明らかにデメリットが大きすぎます。
短期間のうちに大幅な体重減少がみられますので、「ダイエットに成功した」と捉えられがちですが、グリコーゲンの減少に伴う体内水分量の減少にすぎませんので、食事内容を戻せばすぐさま元の体重に戻ります。
また、このような食事管理方法は除脂肪体重を減らしてしまいます。
元の体重に戻るだけであればよいのですが、除脂肪体重を減らしてしまったことによって「ダイエット前よりも体脂肪が増えてしまうリスク」が大きいのです。
これらのことからも、プロテイン断食はやらない方が無難だと考えます。